大和物語 ====== 第35段 堤の中納言内裏の御使にて大内山に・・・ ====== ===== 校訂本文 ===== 堤の中納言((藤原兼輔))、内裏(うち)の御使(つかひ)にて、大内山(おほうちやま)に院の御門おはしますに、参り給へり。もの心細げにておはします。いとあはれなり。 高き所なれば、雲は下(しも)より、いと多く立ちのぼるやうにて見えければ、かくなん、   白雲(しらくも)の九重(ここの)へに立つ峰なれば大内山といふにぞありける ===== 翻刻 ===== つつみの中納言うちの御つかひにておほ うちやまに院のみかとおはしますに まいりたまえりものこころほそけに ておはしますいとあはれなりたかき所 なれは雲はしもよりいとおほくたち のほるやうにてみえけれはかくなん しら雲のここのへにたつみねなれ はおほうちやまといふにそありける/d20r