徒然草 ====== 第174段 小鷹に良き犬大鷹に使ひぬれば小鷹に悪くなると言ふ・・・ ====== ===== 校訂本文 ===== 小鷹に良き犬、大鷹に使ひぬれば、小鷹に悪(わろ)くなると言ふ。大に付き小を捨つることわり、まことにしかなり。 人事(にんじ)多かる中に、道を楽しぶより気味深きはなし。これ、まことの大事なり。一度(ひとたび)、道を聞きて、これに志さん人、いづれのわざか廃れざらん。何ごとをか営まん。 愚かなる人といふとも、賢き犬の心に劣らんや。 ===== 翻刻 ===== 小鷹によき犬。大鷹につかひぬれば。小 鷹にわろくなるといふ。大につき小をす つることはり誠にしか也。人事おほかる 中に。道をたのしふより。気味ふかきは なし。是実の大事也。一たび道を聞て これにこころざさん人。いづれのわざ かすたれざらん。何事をかいとなまん。/k2-29r をろかなる人といふとも。かしこき 犬のこころにをとらんや/k2-29l http://archive.wul.waseda.ac.jp/kosho/he10/he10_00934/he10_00934_0002/he10_00934_0002_p0029.jpg