徒然草 ====== 第116段 寺院の号さらぬよろづの物にも名を付くること昔の人は少しも求めず・・・ ====== ===== 校訂本文 ===== 寺院の号、さらぬよろづの物にも、名を付くること、昔の人は、少しも求めず、ただありのままに、やすく付けけるなり。 このごろは、深く案じ、才覚をあらはさんとしたるやうに聞こゆる。いとむつかし。人の名も、目慣れぬ文字を付かんとする、益なきことなり。 何事も、めづらしきことを求め、異説を好むは、浅才の人の必ずあることなりとぞ。 ===== 翻刻 ===== 寺院の号。さらぬ万の物にも名をつ くる事。昔の人はすこしも求ず。ただあり のままに。やすく付ける也。此比はふかく案 じ。才覚をあらはさんとしたるやうにき こゆる。いとむつかし。人の名も。めなれぬ文 字をつかんとする益なき事也。何事 もめづらしき事をもとめ。異説を このむは。浅才の人の必ある事也とぞ/w1-85l http://archive.wul.waseda.ac.jp/kosho/he10/he10_00934/he10_00934_0001/he10_00934_0001_p0085.jpg