徒然草 ====== 第110段 双六の上手といひし人にその行を問ひ侍りしかば・・・ ====== ===== 校訂本文 ===== 双六の上手といひし人に、その行(てだて)を問ひ侍りしかば、「『勝たん』と打つべからず。『負けじ』と打つべきなり。『いづれの手か、とく負ぬべき』と案じて、その手を使はずして、一目なりとも遅く負くべき手につくべし」と言ふ。 道を知れる教へ、身を治め、国を保たん道も、またしかなり。 ===== 翻刻 ===== 双六の上手といひし人に。其行をとひ 侍しかば。かたんとうつべからず。まけじと うつべき也。いづれの手かとく負ぬべきと 案じて。その手をつかはずして。一め なりともをそくまくべき手につく べしといふ。道をしれる教。身を治め 国を保ん道も。又しか也/w1-81l http://archive.wul.waseda.ac.jp/kosho/he10/he10_00934/he10_00934_0001/he10_00934_0001_p0081.jpg