徒然草 ====== 第31段 雪のおもしろう降りたりし朝人のがり言ふべきことありて・・・ ====== ===== 校訂本文 ===== 雪のおもしろう降りたりし朝(あした)、人のがり言ふべきことありて、文をやるとて、雪のこと何とも言はざりし返り事に、「『この雪いかが見る』と、一筆のたまはせぬほどの、ひがひがしからん人の仰せらるること、聞き入るべきかは。かへすがへす口惜しき御心なり」と言ひたりしこそ、をかしかりしか。 今は亡き人なれば、かばかりのことも忘れがたし。 ===== 翻刻 ===== 雪のおもしろうふりたりし朝。人の がりいふべき事ありて。文をやるとて 雪のことなにともいはざりし返事に。 此雪いかが見ると一筆のたまはせぬほど/w1-26r のひがひがしからん人のおおせらるる 事ききいるべきかは。返々口おしき御 心なりといひたりしこそ。おかしかり しか。いまはなき人なればかばかりの事 もわすれがたし/w1-26l http://archive.wul.waseda.ac.jp/kosho/he10/he10_00934/he10_00934_0001/he10_00934_0001_p0026.jpg