徒然草 ====== 第2段 いにしへのひじりの御代の政をも忘れ・・・ ====== ===== 校訂本文 ===== いにしへの、ひじりの御代の政(まつりごと)をも忘れ、民の愁へ、国の損(そこな)はるるをも知らず、よろづにきよらを尽して、「いみじ」と思ひ、所狭(ところせ)きさましたる人こそ、うたて、思ふところなく見ゆれ。 「衣冠より、馬・車に至るまで、あるにしたがひて用ゐよ。美麗を求むることなかれ」とぞ、九条殿の遺誡((『九条殿遺誡』。九条殿は藤原師輔。))にも侍る。 順徳院((順徳天皇))の禁中の事ども書かせ給へるにも((『禁秘抄』))、「おほやけの奉り物は、おろそかなるをもてよしとす」とこそ侍れ。 ===== 翻刻 ===== いにしへのひじりの御代の政をも わすれ。民の愁国のそこなはるるをもしら ず。よろづにきよらをつくしていみじ と思ひ。所せきさましたる人こそうた ておもふところなく見ゆれ。衣冠より馬 車にいたるまで。有にしたがひて用 よ。美麗をもとむる事なかれとぞ 九条殿の遺誡にも侍る。順徳院の禁/w1-4l http://archive.wul.waseda.ac.jp/kosho/he10/he10_00934/he10_00934_0001/he10_00934_0001_p0004.jpg 中の事どもかかせ給へるにも。おほや けの奉り物は。をろそかなるをもて よしとすとこそ侍れ/w1-5r http://archive.wul.waseda.ac.jp/kosho/he10/he10_00934/he10_00934_0001/he10_00934_0001_p0005.jpg