とはずがたり ====== 巻1 5 昼つかた思ひよらぬ人の文あり・・・ ====== ===== 校訂本文 ===== [[towazu1-04|<>]] 昼つかた、思ひよらぬ人((雪の曙・西園寺実兼))の文あり。見れば、   「今よりや思ひ消えなん一方に煙の末のなびき果てなば これまでこそ((「これまでこそ」は底本、「これにてこそ」で、「に」に「ま歟」と傍書。傍書に従う。))つれなき命も長らへて侍りつれ。今は何事をか」などあり。「かかる心の跡のなきまで((『新古今和歌集』恋二 藤原雅経「消えねただ忍ぶの山の峰の雲かかる心のあとのなきまで」 ))」と、だみ付けにしたる縹(はなだ)((「縹」は底本「はなと」。))の薄様に書きたり。 「忍の山の」とある所を、いささか破りて、   知られじな思ひ乱れれて夕煙なびきもやらぬ下の心は とばかり書きてつかはししも、「とは何事ぞ」と、われながら思え侍りき。 [[towazu1-04|<>]] ===== 翻刻 ===== ふみをもいまたみ侍らてなとや申されけんひるつかた思ひ よらぬ人のふみありみれは  今よりや思きえなん一かたに煙のすゑのなひきはて なはこれに(ま歟)てこそつれなきいのちもなからへて侍つれいまは なに事をかなとありかかる心のあとのなきまてとたみ つけにしたるはなとのうすやうにかきたり忍の山のとある 所をいささかやりて  しられしな思みたれて夕煙なひきもやらぬ下のこころは/s10l k1-11 http://kotenseki.nijl.ac.jp/biblio/100218515/viewer/10 とはかりかきてつかはししもとはなにことそと我なから覚 侍きかくて日くらし侍てゆなとをたにみ入侍らさりし/s11r k1-12 http://kotenseki.nijl.ac.jp/biblio/100218515/viewer/11 [[towazu1-04|<>]]