[[index.html|篁物語]] ====== 1-7 例の書読みて内侍になさんの心ありて親は書を教ふるなりけり・・・ ====== ===== 校訂本文 ===== [[s_takamura1-06|<>]] 例の書(ふみ)読みて、「内侍(ないし)になさん」の心ありて、親は書を教ふるなりけり。文(ふみ)通はしにはしらたれど、この兄(せうと)、心を惑はして思ひ出でられけり。男言ふやう、「かく思ひ出でられ、限りなき心を思ひ((「思ひ」は底本「しひ」。諸本により訂正。))知らずして、よそなる人を思ひ給へるこそつらけれ。   目に近く見るかひもなく思へども心をほかにやらばつらしな」 と言ひければ、「人の御心も知らずや。   あはれとは君ばかりをぞ思ふらむやるかたもなき心とを知れ おもくの((底本「不審」と傍書。))なや」と言ひければ、少し心ゆきて、   いとどしく君の歎きのこがるればあらぬ思ひも燃えまさりけり かく言ひて、心は通ひけれど、親にもつつみ、人にもさはりければ、心解けて久しくも語らはずあり。 [[s_takamura1-06|<>]] ===== 翻刻 ===== けりれいのふみよみてないしに なさんの心ありておやはふみをを しふるなりけりふみかよはしには しらたれとこのせうと心をまと はしておもひいてられけりおとこ いふやうかくおもひいてられかきり なき心をしひしらすしてよそなる 人をおもひたまへるこそつらけれ/s14r めにちかく見るかひもなくおもへとも 心をほかにやらはつらしなといひ けれは人の御心もしらすや  あはれとは君はかりをそおもふらむ  やるかたもなき心とをしれ おもくの(不審)なやといひけれはすこし 心ゆきて  いととしく君のなけきのこかるれは  あらぬおもひももへまさりけり かくいひて心はかよひけれとおやにも/s14l https://kotenseki.nijl.ac.jp/biblio/100002868/viewer/14 つつみ人にもさはりけれは心とけて ひさしくもかたらはすありされ/s15r https://kotenseki.nijl.ac.jp/biblio/100002868/viewer/15