[[index.html|醒睡笑]] 巻8 茶の湯 ====== 15 東堂のもとへ人来たつて問ふ茶堂と申す者候ふまた茶堂と申す者候ふ・・・ ====== ===== 校訂本文 ===== [[n_sesuisho8-148|<>]] 東堂のもとへ人来たつて問ふ、「茶堂(さだう)と申す者候ふ。また茶堂(ちやだう)と申す者候ふ。いづれか本(ほん)にて候ふや」。「いづれくるしからず。されども茶堂(さだう)は唐韻(たうゐん)((唐音に同じ。))にてこびたり」とあれば、男、合点ゆきたる体にて立ち去りぬ。 一両月過ぎ、今度は惣領の子十六・七なるを連れ来たり。「この松千代に、何とぞ男名(をとこな)を付けて賜び候へ」と申せば、すなはち「左近(さこ)の太郎」と付けらるる。親、頭(あたま)を振り感じて後、「左(さ)は唐音でござあるの。いやいや、われらごとき者のせがれに唐音は過ぎて候ふ。ただ「ちやこの太郎」とお付けなされよ」と。 [[n_sesuisho8-148|<>]] ===== 翻刻 ===== 一 東堂のもとへ人来つてとふ茶堂と申者候   又茶堂と申者候いつれか本にて候やいづれ   くるしからすされとも茶堂は唐韻にてこひ/n8-57l   たりとあれは男合点ゆきたる体にてたち   さりぬ一両月過今度は惣領の子十六七なる   をつれ来り此松千代に何とそ男名をつけ   てたひ候へと申せはすなはち左近の太郎と   つけらるる親あたまをふり感して後左は   唐音て御座あるのいやいや我らことき者の   せかれに唐音は過て候唯ちやこの太郎と   おつけなされよと/n8-58r