[[index.html|醒睡笑]] 巻8 茶の湯 ====== 13 山家に居住の貧僧あり・・・ ====== ===== 校訂本文 ===== [[n_sesuisho8-146|<>]] 山家に居住の貧僧あり。たまたま客を得たる。物相(もつさう)一腹をもてなし、茶をたてて出だし、「これは、といわら壺((「といわら壺」は底本「といわわ壺」。後に「といわら壺」とあるのにより訂正。))に詰めたり。色香味を吟じ給へ」。客、「思ひきや、かかる住居に名壺のあらんとは」。 一座事終り、「かの壺を見ん」と乞ふ。僧、眠蔵(めんざう)より持ち出でて、「これは山賤(やまがつ)の粉骨を尽し作るところ、始めの稲をわせといふ。その疾藁(といわら)を幾重も編みかけ((「編みかけ」は底本「あるへかけ」。諸本により訂正。))、焙炉(ばいろ)の紙に包み詰め置き候ふまま、「といわらつぼ」と号するなり。 [[n_sesuisho8-146|<>]] ===== 翻刻 ===== 一 山家に居住の貧僧ありたまたま客を得   たる物相一腹をもてなし茶をたてて出し/n8-56r   これはといわわ壺につめたり色香味を吟し   給へ客おもひきやかかる住居に名壺のあらん   とは一座事をはり彼壺を見んとこふ僧眠   蔵より持出て是は山賤の粉骨を尽し   作るところ始の稲をわせといふ其疾藁を   幾重もあるへかけ焙炉の紙につつみ詰置   候儘といわらつほと号するなり/n8-57r