[[index.html|醒睡笑]] 巻8 秀句 ====== 20 旅人敦賀にて一夜の宿を貸し給へと言ふ・・・ ====== ===== 校訂本文 ===== [[n_sesuisho8-133|<>]] 旅人、敦賀(つるが)にて、「一夜の宿を貸し給へ」と言ふ。亭の答へに、「春か秋冬ならば易(やす)きことなり。夏月(かげつ)に泊まりごとはなるまい」。「いかなれば」と問ふ。「ここは処(ところ)を『つるが』とて、鶴ほどの蚊ありて食らふものを」。旅人言ふ、「それならば宿貸し給へ。毛頭苦しからず。生得(しやうろく)わが住むかた山家(やまが)なれば、山ほどの蚊に食はれつけた身ぢや」と。 [[n_sesuisho8-133|<>]] ===== 翻刻 ===== 一 旅人敦賀にて一夜の宿をかし給へといふ亭   のこたへに春歟秋冬ならは易事なり夏月   にとまり事はなるまい如何なれはととふ爰は   処をつるかとて靏程の蚊ありてくらふ物を   旅人いふそれならは宿かし給へ毛頭くるし   からす生得我すむかた山かなれは山程の   蚊にくはれつけた身しやと/n8-51r