[[index.html|醒睡笑]] 巻8 頓作
====== 9 釈の頓阿桑門の風情し内裏見物の折節・・・ ======
===== 校訂本文 =====
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釈の頓阿(とんあ)、桑門の風情し、内裏見物の折節、ある殿にて、座敷より、「修行の僧はいづくの人ぞ」。「東(あづま)の者にて候ふ」とあれば、すなはち、
何かあづまのはての思ひ出((「はての」は底本「けての」。諸本により訂正。))
とあるに、頓阿、
都にてまづ語るべき富士の雪
「さらば座敷へ」と請ぜらるるに、礼もなく座上になほられたりければ((「なほられたりければ」は底本「なをらのたりければ」。諸本により訂正。))、また、
いやしきものはうへをかくれず
とあり。頓阿、言下に、
水鳥の浮べば月の影踏みて
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===== 翻刻 =====
一 釈(しやく)の頓阿桑(そう)門の風情(ふせい)し内裏(たいり)見物の折節
ある殿にて座敷より修行(しつきやう)の僧はいづくの
人そ東の者にて候とあれはすなはち
なにかあつまのけてのおもひ出と
あるに頓阿
都にてまつかたるへき冨士の雪
さらは座敷へと請せらるるに礼もなく座上/n8-6l
になをらのたりければ又
いやしきものはうへをかへれず
とあり 頓阿言下に
水鳥の浮へは月の影ふみて/n8-7r