[[index.html|醒睡笑]] 巻8 頓作
====== 6 信長公濃州岐阜におましの時宮内卿三位侍従武藤四人に碁を打たせおはしますに・・・ ======
===== 校訂本文 =====
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信長公((織田信長))濃州岐阜(のうしうぎふ)におましの時、宮内卿(くないきやう)((松井友閑))・三位(さんみ)((足利義昭))・侍従(しじう)((織田長益))・武藤(むとう)((武藤惣左衛門か。))、四人に碁を打たせおはしますに、沼の藤六((沼藤六・野間藤六))まかり出で、「この席は四句の文(もん)にて候ふ」と申し上ぐる。「一人は((「一人」は底本「ひたり」。諸本により訂正。))は迷故三位殿(めいごさんみどの)、二には悟故侍従殿(ごこじじうどの)、三に本来武藤殿(ほんらいむとうどの)、四に何処宮内殿(かしよくないどの)」と、指を折りて、時に御機嫌ななめならずありけん、「四句の文とは」。「『迷故三界((「三界」は底本「三男」。諸本により訂正。))城、悟故十方空、本来無東西。何処有南北。(迷ふが故に三界に城(かきす)、悟が故に十方空(ひろ)し、本来東西無し。何(いづ)れの処南北有らん。)』この心を得給はば、生死岸頭大自在(しやうじがんとうだいじさい)ならん」。
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===== 翻刻 =====
一 信長公(のふなかこう)濃州岐阜(しゆうしうきふ)に御座の時宮内卿(くないきやう)三位(み)
侍従(ししう)武藤四人に碁(こ)をうたせおはしますに沼(ぬま)の
藤六罷出此席(せき)は四句の文にて候と申上るひたり
は迷故(めいこ)三位殿二には悟故(こ)侍従殿三に本来武藤
殿四に何処(かしよ)宮内殿と指(ゆひ)をおりて時に御機嫌
ななめならすありけん四句の文とは迷故(まよふゆへ)三男に
城(かきす)悟故(さとるかゆへ)十方空(ひろし)本来無東西何処(いつれのところ)有南北/n8-5l
此心を得たまはは生死岸頭大自在(しやうしかんとうたいしさい)ならん/n8-6r