[[index.html|醒睡笑]] 巻7 謡 ====== 28 かたのごとくの下手大工能を見物に行きける時・・・ ====== ===== 校訂本文 ===== [[n_sesuisho7-085|<>]] かたのごとくの下手大工、能を見物に行きける時、脇が出でて「津の国((摂津国。播州の誤り。))高砂の浦をも一見せばやと存じ候ふ((謡曲「高砂」「播州高砂の浦をも一見せばやと存じ候。」))」と言ひければ、かの大工、ひたもの感じゐるを、左右にある者ども、「ここな者は何事をうなづくやらん」と聞けば、友達に向かひ、「われは高砂の浦を見て、広いとばかり思ひたるに、今の人は『一間狭(せば)い』と言うたはおもしろい。何にても余分をおきてさげすむべきものなり。これぞ後学や」とて、はたはす感じごとは。 妙な聞きやうや((底本、この文小書き。))。 [[n_sesuisho7-085|<>]] ===== 翻刻 ===== 一 かたのことくの下手大工能を見物に行ける   時わきか出て津のくに高砂の浦(うら)をも一見   せばやと存候といひけれはかの大工ひた物   かんしゐるを左右にある者どもここな者は/n7-45r   何事をうなづくやらんときけば友達(ともだち)に   むかひわれは高砂の浦を見てひろいと斗   おもひたるに今の人は一間(けん)せはいといふたは   おもしろいなににても餘分(よふん)をおきてさけす   むへき物也これぞ後学(こうがく)やとてはたはす   かんしごとは   妙なききやうや/n7-45l