[[index.html|醒睡笑]] 巻7 謡 ====== 26 何といふいはれか昔は花になく鶯水にすむ蛙を始め馬などまで歌をば詠みたるぞ・・・ ====== ===== 校訂本文 ===== [[n_sesuisho7-083|<>]] 何といふいはれか、昔は花になく鶯、水にすむ蛙(かはづ)を始め((『古今和歌集』序による))、馬などまで歌をば詠みたるぞ。人倫たる身を受けながら、五文字七文字の分かちさへ知らぬは」と歎く。「やさしの心ばへや。さりながら、馬の詠みたる歌は、いまだ聞かず」。   「世の中にさらぬ別れのなくもがな千代もと祈る人の子のため これこそ馬のよみたる証歌さうよ」。「これは業平((在原業平))のにてはなきか」。「念もない。熊野(ゆや)((謡曲「熊野」))に、『そもこの歌と申すは、長岡に住み給ふ老馬の詠める歌なり((「熊野」「そも此歌と申すは、在原の業平の、其身は朝に隙なきを、長岡に住み給ふ老母の詠める歌なり」。老母と老馬を間違えた。))』とこそ」。 [[n_sesuisho7-083|<>]] ===== 翻刻 ===== 一 なにといふいはれか昔は花になく鶯水に   すむ蛙(かはつ)を始(はしめ)馬などまて歌をはよみたる   ぞ人倫たる身をうけながら五文字七文字   のわかちさへしらぬはとなげくやさしの心は   へやさりながら馬のよみたる歌はいまた   きかす/n7-44r    世中にさらぬ別のなくもかな     千代もといのる人のこのため   これこそ馬のよみたる証哥(せうか)さうよ是は   業平のにてはなきか念もないゆやにそも   此哥と申は長岡にすみたまふ老馬(らうば)   のよめるうたなりとこそ/n7-44l