[[index.html|醒睡笑]] 巻7 似合うたのぞみ ====== 6 数人集まれり居おのが心々の望みを語りつるに一人は言ふ・・・ ====== ===== 校訂本文 ===== [[n_sesuisho7-036|<>]] 数人(すにん)集まれり居、おのが心々の望みを語りつるに、一人は言ふ、「われはただ、生れつきたる両眼のほかに、眼を三つ欲しい。一つは背(せなか)に付け、だしぬき・闇討ちの用心かたがた、あとの方を自由に見たい。一つは膝頭に付け、夜陰の歩行あやまちなからん。一つは手のたけたか指((中指))の先に付け、能の時または風流(ふりう)、何にても見物の時、人のせいたけにかまはず、手をさし上げて見たい」と。   何事も心のままと願ふこそつくり病ふよ満足はせじ 天神((菅原道真))二十五首の内に   賤の女が庭の木の葉にかきたえて明日の薪に嵐をぞ待つ [[n_sesuisho7-036|<>]] ===== 翻刻 ===== 一 数(す)人あつまれりゐをのが心々の望(のぞみ)をかたりつ   るにひとりはいふ我はたた生れつきたる両(りやう)   眼の外に眼を三つほしい一つは背(せなか)につけ   たしぬきやみうちの用心かたかた跡(あと)のかたを/n7-22l   自由(じゆう)に見たひ一つは膝頭(ひざかしら)につけ夜陰(やいん)の   歩行(ほかう)あやまちなからん一つは手のたけたか   ゆびの先につけ能(のふ)の時又は風流(ふうりう)何にて   も見物の時人のせいたけにかまはす手を   さしあけて見たいと    何事も心のままとねかふこそ     つくりやまふよ満足はせし   天神廿五首の内に    賤のめか庭の木の葉にかきたえて/n7-23r    明日の薪にあらしをそ待/n7-23l