[[index.html|醒睡笑]] 巻7 いひ損ひはなほらぬ ====== 5 祈祷連歌の席にて宗匠たる人末座の者に向かひ・・・ ====== ===== 校訂本文 ===== [[n_sesuisho7-023|<>]] 祈祷連歌の席にて、宗匠たる人、末座(ばつざ)の者に向かひ、「思ひ寄りたることあらば、うかがはれ候へ。庭の木草(きくさ)、空行く雲、目前の境界(きやうがい)、いづれか言の葉に漏る類(たぐひ)あらんや」と勧めらるるを種(たね)とし、かかりたる天神の装束をながめゐたりしが、「さらば申してみむや。   紫色の自在天神」 と出だしたるを、執筆(しゆひつ)、「神祇近し((「前の神祇の句を近すぎる」の意。))」とて、追ひ返す。 また、「直し申さん。   紫色の自在宝殿」 と。 せめて始めの句ばかりならば、おだめしかるべからん((底本この文数文字下げで小書き。))。 [[n_sesuisho7-023|<>]] ===== 翻刻 ===== 一 祈祷連歌(きたうれんか)の席にて宗匠(そうしやう)たる人末座(はつざ)   の者にむかひおもひよりたる事あらはうかが   はれ候へ庭の木草(きくさ)空行雲(そらゆくくも)目前(もくせん)の境界(きやうかい)   いつれかことの葉にもる類あらんやとすすめ   らるるをたねとしかかりたる天神の装束(しやうそく)   をなかめゐたりしがさらば申てみむや    紫色(むらさきいろ)の自在天神(じざいてんじん)   と出したるを執筆神祇ちかしとて   追返す又なをし申さん/n7-15l    むらさき色の自在宝殿と      せめて始の句斗ならはおためしかるべからん/n7-16r