[[index.html|醒睡笑]] 巻7 いひ損ひはなほらぬ ====== 1 松永霜台和州信貴の城におはせし時は菓子をすゑて出だすに・・・ ====== ===== 校訂本文 ===== [[n_sesuisho7-019|<>]] 松永霜台(そうだい)((松永久秀))、和州((大和国))信貴の城におはせし時は、菓子をすゑて出だすに、染付にても南蛮物にてもあれ、「一廉(ひとかど)の鉢なければ、座敷の興少なし」と、もてはやすことあり。 名ある侍のもとに霜台を請用し、珍しき鉢を出だせり。大いに感じ讃められけるなかば、相伴の人、「今日の振舞ひは、ただ亭主の鉢びらきにて候ふ」と申しけるを、「何とやらん、言葉の縁悪しし」と言ふに、肝をつぶし、「されば、これの鉢をおひらきあるで候ふ」と。 [[n_sesuisho7-019|<>]] ===== 翻刻 =====    いひ損はなをなぬ 一 松永霜臺(そうたい)和州信貴の城におはせし時は   菓子をすへて出すに染付にても南蛮(なんばん)物   にてもあれ一廉(かと)の鉢なければ座敷の興(けう)す   くなしともてはやす事あり名ある侍   のもとに霜臺を請用し珍敷鉢を出せり   大に感(かん)しほめられけるなかば相伴の人今   日の振舞はたた亭主の鉢ひらきにて候   と申けるをなにとやらん言葉(ことば)のえんあし/n7-13l   しといふに肝をつふしされはこれの鉢をお   ひらきあるて候と/n7-14r