[[index.html|醒睡笑]] 巻6 うそつき ====== 13 ちとうつけにてしかも富める人あり常にともすれは腹鳴ることけしからず・・・ ====== ===== 校訂本文 ===== [[n_sesuisho6-132|<>]] ちとうつけにて、しかも富める人あり。常にともすれは腹鳴ることけしからず。「これは何としたる病や」と人ごとに問ふ。口利きて物知らぬ言ひけるやう、「昔、鳴神((雷神))が味噌桶の中へ落ち入り、上がらんとすれば、柔らかにて足の踏みど弱く、上がり得ず、そのまま死にたるが、香の物になりたり。珍しやと奔走し食ひけり。それを食ひたるほどの者の腹が鳴りやまざりつる。今も不断そなたのごとく腹の鳴るは、かの鳴神の香の物食うたる子孫にすんだ」と語りつれば、病者大きに満足し、「さては、わが腹の鳴ることただならず。家の面目なり」と、慢じくすみし。 [[n_sesuisho6-132|<>]] ===== 翻刻 ===== 一 ちとうつけにてしかもとめる人あり常に   ともすれは腹なる事けしからす是は何としたる   病やと人毎にとふ口ききて物しらぬ者云ける   やう昔なる神か味噌桶の中へ落入あからん   とすれはやはらかにて足のふみとよはくあかり   えす其儘死たるがかうの物になりたりめづ/n6-65l   らしやと奔走しくひけりそれを食たるほどの   者の腹がなりやまざりつる今も不断そなた   のことく腹のなるは彼なるかみのかうの物くふ   たる子孫にすんだとかたりつれば病者大に   満足しさては我腹のなる事たたならす家   の面目也と慢じくすみし/n6-66r