[[index.html|醒睡笑]] 巻6 うそつき ====== 12 信長公岐阜に御ましの時沼の藤六尾州よりただ今参りて候ふと申し上ぐる・・・ ====== ===== 校訂本文 ===== [[n_sesuisho6-131|<>]] 信長公((織田信長))、岐阜に御ましの時、沼の藤六((沼藤六・野間藤六))、「尾州((尾張国))よりただ今参りて候ふ」と申し上ぐる。「何事も尾張に珍しきことはなきか」と御諚(ごぢやう)あるに、「されば鵺(ぬえ)を木にて造りたるが御座候ふ」と申し上ぐる。「嘘(うそ)であらうず。さりながらまことか、その様子を聞かん」と仰せの時、「頭(あたま)はさるすべり、尾はくちなし、鳴く声ぬでの木にて」と申したりける。 時に当たりては奇特(きどく)なる嘘や((底本この文小書き。))。   世の中はうそばかりにて過ぎにけり今日もまたうそ明日もうそうそ   世の中の人の心のすきずきをわれに似ぬとて偏執(へんしふ)なせそ [[n_sesuisho6-131|<>]] ===== 翻刻 ===== 一 信長公岐阜に御座の時沼の藤六尾州よ   り唯今参りて候と申上る何事も尾張に珎   布事はなきかと御諚あるにされは鵺を木に   て造りたるか御座候と申上るうそてあらふ   すさりなから実か其様子をきかんと仰せの   時あたまはさるすへり尾はくちなしなく声ぬ   ての木にてと申たりける時にあたりてはきとくなるうそや    世中はうそはかりにて過にけり/n6-65r    けふも又うそあすもうそうそ    世中の人の心のすきすきを    我に似ぬとて偏執なせそ/n6-65l