[[index.html|醒睡笑]] 巻6 うそつき ====== 6 明け暮れ嘘に過を言ひ回りたる者の方へ思ひよらず客あり・・・ ====== ===== 校訂本文 ===== [[n_sesuisho6-125|<>]] 明け暮れ、嘘に過(くわ)を言ひ回りたる者の方へ、思ひよらず客あり。常にあさましき小者二人使ふとて、一人の名をば「十人」と付け、一人の名をば「五人」と付け置きたりしが、客の聞くやうに声を高々と、「やいやい、十人は山へ薪(たきぎ)しに行け。五人は藪(やぶ)の竹を切れ」と。   言ふに似ぬ心の内のつたなさを恥づる思ひのなどなかるらむ   月も日もさやかに照らすかひぞなきこの世の人のうはの空ごと   空にけふ人は恥づべき時雨(しぐれ)かな [[n_sesuisho6-125|<>]] ===== 翻刻 ===== 一 明暮うそにくわをいひまはりたる者のかたへ   思ひよらす客ありつねに浅間しき小者   二人つかふとて一人の名をは十人とつけひと   りの名をは五人とつけ置たりしか客の聞やう   に声を高々とやいやい十人は山へ薪しにゆけ   五人は藪の竹をきれと/n6-62l    いふに似ぬこころの内のつたなさを    はつるおもひのなとなかるらむ    月も日もさやかに照すかひそなき    この世の人のうはの空こと    空にけふ人ははつへき時雨かな/n6-63r