[[index.html|醒睡笑]] 巻6 うそつき
====== 4 聟あり舅の方へ見舞ふとてある町を通りしが新しき雁を棚に出だし置きたり・・・ ======
===== 校訂本文 =====
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聟(むこ)あり舅(しうと)の方へ見舞ふとて、ある町を通りしが、新しき雁を棚に出だし置きたり。二百にて買ひ、矢を通し持たせ行く。舅出で合ひ、雁を見て、「これは」と問ふに、「われらの道にてつかまつりたる」とあれば、大きに悦喜し、一族みな寄せて披露し、振舞ひわめきけり。
聟、勝つに乗り、「今一度持たせ参らせん」と、家の子にしめしあはせ、「われは先へ行かん。後より調へ来たれ」と言ひ捨て、まづ舅にあふと同じく、「異な仕合せにて、また雁をつかまつりて候ふ」と言ふ。舅、いさみ誇れり。
かの内の者、塩鯛に矢を貫き持て来たれる。「して、今の矢は当たらなんだか」。「されば、雁には外れて、塩鯛に当たり参らせた」と。
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===== 翻刻 =====
一 聟あり舅のかたへ見まふとてある町をとを
りしが新しき雁を棚に出し置たり二百にて
かい矢をとをしもたせ行舅出あひ雁をみて
是はととふに我等の道にて仕たるとあれは大
に悦喜し一族みなよせて披露し振舞わめき
けり聟かつにのり今一度もたせ参せんと家
の子にしめしあはせ我は先へゆかん後より/n6-61l
調来れといひすて先舅にあふと同しく
いな仕合にて又雁を仕て候といふ舅いさみ
ほこれり彼内の者塩鯛に矢をつらぬき持
来れるして今の矢はあたらなんたかされは雁
にははつれて塩鯛にあたり参らせたと/n6-62r