[[index.html|醒睡笑]] 巻6 推はちがうた
====== 10 ものごと心がけある人山寺に行き一夜二夜泊まることあり・・・ ======
===== 校訂本文 =====
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ものごと心がけある人、山寺に行き、一夜二夜泊まることあり。少人(せうにん)のうち、みめさますぐれしを「古今(こきん)」と呼ぶ。客聞き、「これは珍しや。この名の心を案ずるに、『いにしへも今も若衆道にはあるまい』といふ儀にや」。いろいろ心をつけ案じけるが、師の坊に向かひ、「『古今』とはいかなる巨細(こさい)ありて付け給へる」と問うたれば、しばらくそのいはれを隠す。
籬(まがき)の内の梅が香は、つつむに色もいやまさり、なほ奥深く思ひなし、しきりに意趣を尋ねし時、院主(いんじゆ)の御坊、ささやきて言はれけるこそうたてけれ。「あの子が親はけしからぬ大きん((大きなきんたま))にてありつるが、あれはまたひきかへ、きんがいかにも小ささに、『小きん』と付けて候ふ」と。
師匠の智恵、楪子(ちやつ)よりも浅(あさ)や((底本この文小書き。))。
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===== 翻刻 =====
一 毎物心かけある人山寺に行一夜二夜とま
る事あり少人の内みめさますくれしを/n6-45l
古今とよふ客きき是はめつらしや此名の心をあん
するにいにしへもいまも若衆道にはあるまいといふ
儀にやいろいろ心をつけあんしけるか師の坊
にむかひ古今とは如何なる巨細ありてつけた
まへるととふたれはしはらく其いはれをかくす籬(まかき)の
内の梅か香はつつむに色もいやまさり猶おく
ふかくおもひなし頻に意趣を尋し時院主の
御坊ささやきていはれけるこそうたてけれあの
子か親はけしからぬ大きんにてありつるかあれは/n6-46r
又ひきかへきんがいかにもちいささにこきんとつけ
て候と 師匠の智恵ちやつよりもあさや/n6-46l