[[index.html|醒睡笑]] 巻6 若道知らず ====== 3 幸菊といふ一人子を寺にのぼせ物習はせけるが・・・ ====== ===== 校訂本文 ===== [[n_sesuisho6-054|<>]] 幸菊といふ一人子(ひとりご)を寺にのぼせ、物習はせけるが、久しく会はぬなつかしさに、親、雑賞(ざつしやう)をかまへ、師のもとに行く。若き坊主の、幸菊に向かひ、「小穴(せうけつ)、小穴」と言ふ。また余(よ)の人も「小穴」と呼ぶ。 「そも奇異の言葉や」と思ひ、近付けて問ひければ、これも(([[text:sesuisho:n_sesuisho6-053|若道知らず 1]]参照。))、「この寺に下戸の唐名(からな)を小穴といふ」と答ふ。「さもあらん」と合点(がてん)し、かさねて夫婦連れ立ち、寺に参りし時、女房に酒をしひぬれば、よく知りたる顔にかの親言ふ、「われらは一円の小穴にて候ふ。子持ち((妻))はちと広穴(くわうけつ)なり。しひ給へ」と申した。 [[n_sesuisho6-054|<>]] ===== 翻刻 ===== 一 幸菊といふひとり子を寺にのほせ物ならはせ   けるか久しくあはぬなつかしさに親雑賞をかま   へ師のもとに行わかき坊主の幸菊にむかひ小穴   小穴といふ又よの人も小穴とよぶそも奇異のこと   葉やと思ひちかづけてとひけれはこれも此寺に   下戸のからなを小穴といふとこたふさもあらんとか   てんしかさねて夫婦つれたち寺に参しとき/n6-27r   女房に酒をしいぬれはよくしりたるかほに   彼親いふ我らは一ゑんの小穴にて候子もちは   ちと広穴なりしいたまへと申た/n6-27l