[[index.html|醒睡笑]] 巻6 児の噂 ====== 17 比叡山北谷持法坊に児あまたあり冬の夜豆腐一二丁を求め田楽にする・・・ ====== ===== 校訂本文 ===== [[n_sesuisho6-016|<>]] 比叡山北谷持法坊に、児(ちご)あまたあり。冬の夜、豆腐一二丁を求め田楽にする。老僧言ひ出だされけるは、「おのおの秀句を言うて食ふべし」と。 大児やがて、「われは仏のつぶり((御髪(みぐし)で三串。))と申さむ」。三串取りて退く。また一人は「八日の仏((薬師の縁日で八串))」とて八串(やくし)取りたり。 後に小児、屏風のかげより出づるを見れば、髪をばつと乱し、たすきをかけ、左右の手にて目・口を広げ、「われは鬼なり。みな食はう」と、ありたけ取りたれば、せんかたなさに坊主は、古き手拭ひを頭にかぶり、手をさし出だし、「乞食(こつじき)に参りた。一つあて、おもらかしあれ」と。 老僧のはたらき三国一((底本この文数文字下げで小書き。))。 [[n_sesuisho6-016|<>]] ===== 翻刻 ===== 一 比叡山北谷持法坊に児あまたあり冬の   夜豆腐一二てうをもとめ田楽にする   老僧いひ出されけるはをのをのしうくを   いふてくふべしと大児やかてわれは仏   のつぶりと申さむ三くしとりてのく又   ひとりは八日の仏とてやくしとりたり後/n6-11r   に小児屏風のかげより出るをみれば髪をは   つとみだしたすきをかけ左右の手にて   目口をひろけわれは鬼也みなくわふとあり   たけとりたれば詮方なさに坊主はふるき   てぬくひを頭にかふり手を指出し乞食   に参りた一つあておもらかしあれと     老僧のはたらき三国一/n6-11l