[[index.html|醒睡笑]] 巻6 児の噂 ====== 13 児を請じて歌うつ舞うつすれども隣寮の坊主をかつて呼ばず・・・ ====== ===== 校訂本文 ===== [[n_sesuisho6-012|<>]] 児(ちご)を請じて謡うつ舞うつすれども、隣寮(りんれう)の坊主をかつて呼ばず。腹立千万(ふくりふせんばん)にてゐけるに、誰人のとりはづしてやらん、粗忽(そこつ)の音((屁))しけり。 夜も明けば、児も帰らんとこそ思ひしに、さはなく、ゆるゆると留め、朝食のあげくに、またささめきあへり。憎しと思ふ心やありけん、隣より呼びかけ、「お座敷へ申したきことの候ふ。法華経にいはく、簫笛琴箜篌鐃銅鈸(せうちやくきんくごうねうどうばつ)は音ありて香(か)なし。栴檀香沈水香多摩羅跋香多伽羅香(せんだんかうぢんすゐかうたまらばつかうたからかう)は香あつて音なし。昨夜のおならは香あり音あり。一段殊勝、殊勝」。    まちかけれども知らず顔なる   秋を穂にこむる夏野の村すすき  俊也 [[n_sesuisho6-012|<>]] ===== 翻刻 ===== 一 児を請してうたふつまふつすれども隣寮   の坊主をかつてよはす腹立千万にてゐけるに/n6-9r   誰人のとりはつしてやらんそこつの音しけり   夜もあけは児もかへらんとこそおもひしに   さはなくゆるゆるとととめ朝食のあけくに又   ささめきあへりにくしとおもふ心やありけん隣   よりよひかけお座敷へ申度事の候法花経に云   簫(せう)笛(ちやく)琴(きん)箜篌(くごう)鐃(ねう)銅鈸(どうばつ)は音ありて香(か)なし   栴檀香(せんたんかう)沈水(ちんすい)香多摩羅跋(たまらはつ)香多伽羅香は香   あつて音なし昨夜のおならは香あり音あり一段殊勝殊勝/n6-9l     まちかけれともしらすかほなる    秋を穂にこむる夏野の村薄  俊也/n6-10r