[[index.html|醒睡笑]] 巻6 児の噂 ====== 8 今朝とくから北谷へ大児の呼ばれておはしたるが・・・ ====== ===== 校訂本文 ===== [[n_sesuisho6-007|<>]] 今朝とくから北谷((比叡山延暦の横川))へ大児(おほちご)の呼ばれておはしたるが、春の日の長きも遊ぶ時には短かく覚ゆるは常の習ひ、夢ばかりにことさり、夕陽日に入相(いりあひ)の鳴るころ、わが住む坊に帰り、起きてみつ寝てみつ、苦しさうにいたはられけるを、小児(こちご)見かね、「そなたの煩ひは、心地いかがある」と問はれし。「ただ今日のもてなしの餅を食ひ過ぐして、胸の焼くるが苦しい」と言はれしを、「われもちと、その類火にあうてみたいよ」と。 余義もない望みですよ((底本この文、数文字下げで小書き。))。 [[n_sesuisho6-007|<>]] ===== 翻刻 ===== 一 今朝とくから北谷へ大児のよはれておはし   たるか春の日のなかきもあそふ時にはみしかく   おほゆるはつねのならひ夢はかりに事さり夕陽   日に入あひのなる比わかすむ坊にかへり   おきてみつねてみつくるしさうにいたはられ   けるを小児みかねそなたの煩はここちいかかある/n6-6l   ととはれしたたけふのもてなしの餅をくひ   過してむねのやくるかくるしいといはれしを   われもちとそのるいくわにあふて見たいよと      餘義もないのそみてすよ/n6-7r