[[index.html|醒睡笑]] 巻5 人はそだち ====== 31 飯後の湯出でたるに風味ことに香ばしく大きにすぐるるなど讃めけるを・・・ ====== ===== 校訂本文 ===== [[n_sesuisho5-097|<>]] 飯後(はんご)の湯出でたるに、風味ことに香ばしく、「大きにすぐるる」など讃めけるを、女房聞き付け、嬉しげに暖簾(のうれん)の隙(ひま)より顔さし出だし、「お湯の香ばしきもことわりや、たき物((焚き物・薫物))をくべたほどに」と。 座にゐたる皆々も、耳にしみてぞ感じける。中に一人うらやみ帰り、妻(つま)に語れば、「それしきのことをば、誰も言ふべきものを」とあざ笑ひぬ。 ある時、知音(ちいん)を呼び並べ、飯の湯を以前のやうにととのへ出だし、人々、「香ばしや」と讃める時、女房はばからず、「お湯は香ばしからう。柴(しば)を三束くべたほどに」と。 [[n_sesuisho5-097|<>]] ===== 翻刻 ===== 一 飯後(はんご)の湯出たるに風味ことにかうはしく大   にすくるるなどほめけるをねうばう聞つけ   うれしげにのうれんのひまよりかほさし   出しお湯のかうばしきもことはりやたき   物をくべたほどにと座にゐたるみなみなも   耳にしみてそかんしける中に一人うらやみ   かへり妻(つま)にかたればそれしきの事をは/n5-66l   たれもいふべき物をとあざわらひぬある時   知音をよびならべ飯の湯を以前のやうに   ととのへ出し人々かうばしやとほめる時   ねうばうはばからすお湯はかうばしからふ   柴(しば)を三束くべた程にと/n5-67r