[[index.html|醒睡笑]] 巻5 人はそだち ====== 21 山深く住む貧乏人国なかへ出でけるが折ふし宿に客あり・・・ ====== ===== 校訂本文 ===== [[n_sesuisho5-087|<>]] 山深く住む貧乏人、国なかへ出でけるが、折ふし宿に客あり。麺子(めんす)を振舞ふに行きあひ、人なみなみに膳をすわりても、さらに合点ゆかねば、食ふべきやう((「やう」は底本「う」なし。諸本により補う。))惘然(ばうぜん)たり。ただ座上を見合はするばかりなりし。再進((「再進」は底本「再を」。諸本により訂正。))を盛る人に向かひ、「このお名は何と申すぞ」と問ふ。給仕、われらが名を尋ぬると思ひ、「弥二郎」と答ふ。 すでに山に帰り、似たる友とぞ語りける。「今度、弥二郎といふ物を食うたは」。「めづらしきことや」とうらやみて過ぎしが、件(くだん)の者ども二・三人連れだち、ある市に出で、素麺(さうめん)を干して置きたるを見付け、「あれよあれよ、なま弥二郎があるは。ゆで弥二郎にして食はせたいな」と。 [[n_sesuisho5-087|<>]] ===== 翻刻 ===== 一 山ふかくすむびんばう人くになかへ出けるが折   ふし宿に客あり麺子(めんす)をふるまふに行あひ/n5-61r   人なみなみに膳をすはりても更に合点ゆかねば   くふへきや惘然(はうせん)たり唯座上を見あはする   斗なりし再ををもる人にむかひ此お名   はなにと申そととふ給仕我等か名をたつぬる   とおもひ弥二郎とこたふすでに山にかへりに   たる友とぞかたりける今度弥二らといふ物を   くふたはめつらしき事やとうらやみて過しが   件の者ども二三人つれだちある市に出   さうめんをほして置たるを見つけあれよあれよ/n5-61l   なま弥二らかあるはゆで弥二郎にしてくわせ   たひなと/n5-62r