[[index.html|醒睡笑]] 巻5 人はそだち
====== 10 山の一院に児三人あり・・・ ======
===== 校訂本文 =====
[[n_sesuisho5-076|<>]]
山((比叡山延暦寺))の一院に、児(ちご)三人あり。
一人は公家にておはせし。坊主、「年に二度(ふたたび)物思ふ」といふ題を出だせり。
春は花秋は紅葉の散るを見て年にふたたび物思ふかな
一人の小児は侍にてありし。「夜は二度物思ふ」といふ題なり。
宵は待ちあかつき人の帰るさに夜はふたたび物思ふかな
いま一人の児は中方(ちうばう)((中間法師))の子なり。「月に二度物思ふ」といふ題にて、
大師講地蔵講にも呼ばれねば月にふたたび物思ふかな
[[n_sesuisho5-076|<>]]
===== 翻刻 =====
一 山の一院に児(ちご)三人あり一人は公家にておはせし
坊主年(とし)に二度物思ふといふ題を出せり
はるは花あきは紅葉のちるをみて
年に二度物おもふかな/n5-56l
一人の小児は侍にてありしよるは二度物思と
いふ題なり
宵は待あかつき人のかへるさに
夜は二度物思ふかな
いまひとりの児は中方(ちうはう)の子也月に二度物思
といふ題にて
大師講地蔵講にもよはれねは
月に二たひ物思ふかな/n5-57r