[[index.html|醒睡笑]] 巻5 人はそだち ====== 9 和泉の堺車の町に商人禅門になりたるありしが・・・ ====== ===== 校訂本文 ===== [[n_sesuisho5-075|<>]] 和泉の堺車の町に、商人(あきびと)、禅門になりたるありしが、貴人のさし給へる刀・脇差にても、 上臈若衆の小袖・帯・袴にても、見るほどの物に、代をさし値を付くること、天然(てんねん)かれがすきなりき。 時にあたり、あさましかりしかば、常に崇敬(そうぎやう)せし東堂あり、「そちに教へん大事あり。聞かんや」。「なかなか」と申す時、「自今(じこん)以後、物の値をさすべからず」とあれば、手合せ拝み拝み、「さてもかたじけなき御意に候ふ。ただ今の御言葉は、百貫つかまつらうと存ずる」。 [[n_sesuisho5-075|<>]] ===== 翻刻 ===== 一 和泉の境(さかい)車の町に商(あき)人禅門(せんもん)になりたる   ありしが貴人のさしたまへる刀脇指(わきさし)にても   上臈若衆の小袖おびはかまにても見る   ほどの物に代をさしねをつくる事天然(てんねん)かれ   がすき也き時にあたりあさましかりしかば/n5-56r   常に崇敬(そうけう)せし東堂(とうだう)ありそちにをしへん   大事ありきかんや中々と申時自今以後(じこんいご)物   のねをさすべからすとあれば手合おがみ   おがみさても忝御意(ぎよい)に候唯今の御言葉(ことば)は   百貫仕らふと存ずる/n5-56l