[[index.html|醒睡笑]] 巻5 人はそだち ====== 2 客を得たりとりあへず振舞ひに源氏のお汁をせよとこそ言ひ付けけれ・・・ ====== ===== 校訂本文 ===== [[n_sesuisho5-068|<>]] 客を得たり。「とりあへず振舞ひに源氏のお汁をせよ」とこそ言ひ付けけれ。珍しき汁を食ふべきやうに待ちゐたれば、夕顔(ゆふがほ)の汁なり。「こは何のゆゑに『源氏の御汁』とは言ふぞや」。「源氏には夕顔の巻あればなり」。 「これこそ安きもてなし」と案じ、宿に帰りて後、ふと客を見かけ、「めしを申せ。お汁には源氏をせよ」とあり。汁の出でくるまで待ちえず、「何もの((「何もの」は底本「たにもの」。諸本により訂正。))を『源氏の御汁』とは言ふぞ」と問はれ、「ふくべの汁のことよ」。   夕顔の棚の下なる夕涼み男はててら妻(め)はふためして((「ふたのして」とあるべき。)) 「ててら」は膝だけある着る物なり。「ふため((「ふたの」が正しい。))」とは湯具(ゆぐ)の短かきをいふとや。 [[n_sesuisho5-068|<>]] ===== 翻刻 ===== 一 客を得たりとりあへずふるまいに源氏(けんじ)のお   汁をせよとこそいひつけけれめつらしき   汁をくふべきやうにまちゐたればゆふがほ   の汁也こはなにのゆへに源氏の御汁とは   いふぞや源氏にはゆふがほのまきあればなり/n5-52r   これこそやすきもてなしとあんじ宿にかへり   て後ふと客を見かけめしを申せお汁には   源氏をせよとあり汁の出くるまでまちえ   ずたにものを源氏の御汁とはいふぞととは   れふくべの汁のことよ    夕顔(かほ)の棚の下なるゆふすすみ     男はててら妻(め)はふためして   ててらは膝(ひざ)だけあるきるものなりふためとは   ゆくのみしかきをいふとや/n5-52l