[[index.html|醒睡笑]] 巻5 人はそだち
====== 1 東の奥より都に上りたる人あり・・・ ======
===== 校訂本文 =====
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東(あづま)の奥より都に上りたる人あり。さる古寺に立ち寄り、院主に参会し、物語など時過ぎけるまま、菓子持ち出でて小姓を呼び、「いかにもお茶をもみぢにたてよ」とありしを、客、「何たる子細にや」と問ふ。「ただ、『こうよう((「濃くよく」のウ音便。))に』といふことなり」と。
「あなおもしろの言の葉や」と覚えつつ、本国に帰り、わざと近付きの友を呼び振舞ひ、かねてより小姓に言ひ教へ、「お茶をもみぢにたて申せ」とあり。人々、「さすがに、このたび上洛のしるしあり」と感じ、ことのおもむきをうかがひたれば、「『こくよくたて申せ』といふことだよ」と。
あながちのその人のとがにはあらず。物ごと、ただ国の風による((底本、この文数文字下げで小書き。))。
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===== 翻刻 =====
人はそだち
一 東(あつま)の奥(おく)より都にのぼりたる人ありさる古寺
に立寄院主(ゐんしゆ)に参会(さんくわい)し物語など時過ける
まま菓子持出て小性をよびいかにもお茶を
もみぢにたてよとありしを客なにたる子細
にやととふただこうようにといふ事也とあなお
もしろのことの葉やとおほえつつ本国に
帰り態ちかづきの友をよびふるまいかねて
より小性にいひおしへお茶をもみぢにたて/n5-51l
申せとあり人々さすがに此度上洛のしるし
ありとかんし事のおもむきをうかがひ
たれはこくよくたて申せといふ事たよと
あながちのその人のとがにはあらず物毎たた国の風による/n5-52r