[[index.html|醒睡笑]] 巻5 上戸
====== 2 尊氏将軍五世の孫義政公の御時洛中洛外酒を禁じ給ふことあり・・・ ======
===== 校訂本文 =====
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尊氏将軍((足利尊氏))五世の孫義政公((足利義政))の御時、洛中洛外酒を禁じ給ふことあり。万阿弥とて、同朋(どうぼう)のさぶらひしが、いかがして呑みたるやらん、面(つら)もどこも赤漆(あかうるし)にて塗りたる風情なるが、御前にひざまつきたり。
大樹、御覧じつけられ、「おのれは酒をくらうた面ぞや」と仰せあれば、「いや、あまり寒きまままかり出でざまに、焚き火にあたりてござる」と。「さあらば、ここへうせよ。かいでみん」とあり。是非なうて参りたれば、「隠れがない、熟柿(じゆくし)臭いは」と御諚(ごぢやう)の時、万阿弥、「さやうなる義もござ候ふべし。柿の木を焚き火にあたり参らせたほどに」と。
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===== 翻刻 =====
一 尊氏将軍五世の孫義政公の御時洛中洛外
酒を禁し給ふ事あり万阿弥とて同朋(どうほう)の
さふらひしがいかがして呑たるやらんつらも
どこも赤漆にてぬりたる風情なるが御前に
跪(ひさまつき)たり大樹御覧しつけられをのれは酒
をくらふたつらぞやと仰あれはいやあまりさ
むきまま罷出さまにたき火にあたりて御座
るとさあらばここへうせよかいてみんとあり
是非なふて参りたれはかくれかない熟(じゆく)し/n5-39l
くさいはと御諚の時万阿弥さやうなる義も
御座候べし柿の木をたき火にあたり参ら
せたほどにと/n5-40r