[[index.html|醒睡笑]] 巻5 婲心 ====== 38 左衛門尉蔵人頼実はいみじきすき者なり・・・ ====== ===== 校訂本文 ===== [[n_sesuisho5-037|<>]] 左衛門尉蔵人頼実((源頼実))はいみじきすき者なり。和歌に志(こころざし)深くて、「五年が命を奉らん。秀歌詠まさせ給へ」と住吉((住吉大社))に祈り申しけり。 その後、年経て、重き病を受けたりける時、祈れども死にければ、家にありける女に、住吉の明神つき給ひて、「かねて祈り申せしことをば忘れたるか。   木葉散る宿は聞きわくことぞなき時雨する夜も時雨れせぬ夜も といへる秀歌詠ませしは、なんぢが信をいたしてわれに志し、祈り申せしゆゑなり。されば、このたびは、いかにも生くまじきぞ」と仰せられける((「仰せられける」は底本「えつけゝる」。諸本により訂正。))。 [[n_sesuisho5-037|<>]] ===== 翻刻 ===== 一 左衛門尉蔵人頼実(よりさね)はいみじきすき者也和哥   に志ふかくて五年か命を奉らん秀哥よま   させ給へと住吉に祈申けり其後年経て   重き病をうけたりける時祈とも死けれは   家にありける女に住吉の明神つき給て兼(かねて)/n5-20l   祈申せし事をはわすれたるか    木葉ちる宿は聞わく事そなき     時雨する夜もしくれせぬ夜も   といへる秀哥よませしは汝(なんぢ)か信をいたして   我に志いのり申せし故也されは此たひはいか   にもいくましきぞとみえつけゝる/n5-21r