[[index.html|醒睡笑]] 巻5 婲心 ====== 30 隠し題をいみじく興ぜさせ給ひける御門の篳篥を詠ませられけるに・・・ ====== ===== 校訂本文 ===== [[n_sesuisho5-029|<>]] 隠し題をいみじく興ぜさせ給ひける御門の、「篳篥(ひちりき)」を詠ませられけるに、人々悪(わろ)く詠みたるに、木樵(こ)る童(わらべ)の、暁、山へ行くとて言ひける、「このごろ篳篥を詠ませさせ給ひたるを、人のえよみ給はざんなる。童こそ詠みたれ」と言ひけれは、具して行く童、「あなをかし。かかることな言ひそ。さまにも似ず。いまいまし」と言ふに、「など、必ずさまに似ることか」とて、   めぐり来る春々ごとに桜花いくたびちりき人に問はばや と言ひたりけるぞやさしき。 [[n_sesuisho5-029|<>]] ===== 翻刻 ===== 一 かくし題をいみしく興せさせ給ける御門の   ひちりきをよませられけるに人々わろ   くよみたるに木こる童(わらへ)の暁山へ行とて   いひけるこのころ篳篥(ひちりき)をよませさせ給た   るを人のえよみ給はざんなる童こそよみ   たれといひけれはぐして行童あなを   かしかかる事ないひそさまにも似ずいま   いましといふになどかならすさまににる事/n5-16l   かとて    めくりくる春々ごとに桜花     いくたひちりき人にとははや   といひたりけるぞやさしき/n5-17r