[[index.html|醒睡笑]] 巻5 婲心
====== 18 久しくあひなれし夫婦の中に思ひよらずいさかふことありて・・・ ======
===== 校訂本文 =====
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久しくあひなれし夫婦の中に、思ひよらずいさかふことありて、妻(つま)に暇(いとま)をやりぬ。家を離れんとする日、けしからず大雨降りしかば、あひなれたるわりなき友集まり、「いたはしや」など言ふに、
降らば降れ曇らば曇れ照るとても濡らさで行かん袖ならばこそ
と詠みしを、「あはれ」と、え去りがたくてとどめけるこそ心あれ。
これを誰(た)そと、しづかに聞けば、和泉式部がいにしへ丹後の国にてのことかやいふ。
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===== 翻刻 =====
一 久相馴(あいなれ)し夫婦(ふうふ)の中におもひよらずいさかふ
事ありて妻(つま)にいとまをやりぬ家をはなれんと
する日けしからす大雨ふりしかばあひ馴たる/n5-11l
わりなき友あつまりいたはしやなどいふに
ふらはふれくもらはくもれてるとても
ぬらさてゆかん袖ならはこそ
とよみしをあはれとえさりがたくてととめける
こそ心あれこれをたそとしつかにきけは和泉式
部かいにしへ丹後の国にての事かやいふ/n5-12r