[[index.html|醒睡笑]] 巻4 唯あり
====== 25 ある者恋慕したる若衆の東国に下るを・・・ ======
===== 校訂本文 =====
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ある者、恋慕したる若衆(わかしゆ)の東国に下るを、悲しみの涙とともに大津まで送り、泣く泣くしる谷越((渋谷越))を上る。清水((清水寺))の南に、若松が池((「若松が池」は底本「若松がき」。諸本により訂正。))といふあり。そのほとりにのぞみ思ふ、「命あればぞ、かかる憂き目にもあへ。しかじ、身を投げて死なんには」と、帯をとき池に入り、頭(くび)ぎはまでつかりたるが、思案変り、急ぎて陸(くが)にあがり、
君ゆゑに身を投げんとは思へども底なる石に額(ひたひ)あぶなし
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===== 翻刻 =====
一 或者恋慕(れんほ)したる若衆(わかしゆ)の東国(とうこく)に下るを
かなしみの涙(なみた)とともに大津まて送(おくり)泣々(なくなく)しる
谷越(こゑ)をのほる清水の南に若松がきと云
あり其辺にのそみ思ふ命あればぞかかる/n4-65l
うき目にもあへ不(シ)如(シカ)身を投(なげ)て死なんには
と帯をとき池に入り頭(くび)ぎはまでつかりたるが
思案かはり急て陸(くか)にあかり
君ゆへに身を投けんとは思へとも
底なるいしに額(ひたい)あふなし/n4-66r