[[index.html|醒睡笑]] 巻4 唯あり
====== 12 母におくれたる者肖柏のもとに来たれり・・・ ======
===== 校訂本文 =====
[[n_sesuisho4-100|<>]]
母におくれたる者、肖柏のもとに来たれり。「愁傷のほど推し量りぬ。患ひは何にて」など問はれける時、「はじめ血の道にて候ふを、医師(くすし)の見そこなはれ、風の療治をせられ、薬違ひにて候ひつる」と申しあえり。肖柏法印、「おうおう、いづれ一度は、誰(たれ)も薬違ひがあらうず」と。
人を送りて帰る夕暮
身はいつの煙(けぶり)のために残るらむ
正観音経((『請観音経』))に、「毘舎離人民平復如本(びしやりにんみんへいふくによほん)」と説きて、現世に五種の鬼病(きびやう)を除き給ひし阿弥陀なり。天竺、百済(はくさい)、和朝に伝へ来たりし善光寺の如来と拝し奉る。
かの堂の柱に虫の食うたりし歌、
待ちわびて歎くと告げよみな人にいつをいつとて急がざるらん
[[n_sesuisho4-100|<>]]
===== 翻刻 =====
一 母にをくれたる者肖柏(せうはく)のもとに来れり愁(しう)
傷(しやう)のほどをしはかりぬわづらいはなににて
なととはれける時はしめ血の道にて候を医/n4-59l
師の見そこなはれ風の療治をせられ薬ち
がひにて候つると申あえり肖柏法印おう
おういづれ一度はたれも薬ちかひかあらふすと
人を送りてかへる夕暮
身はいつの煙のために残るらむ
正観音経に毘舎離人民平復如本(ひしやりにんみんへいふくによほん)と
説て現世(けんせ)に五種(しゆ)の鬼病(きひやう)を除(のそき)給ひし阿弥
陀なり天竺(ちく)百済(さい)和朝に伝来(つたへきたり)し善光寺
の如来と拝したてまつる彼堂(たう)の柱(はしら)に虫の食(くふ)/n4-60r
たりし哥
待詫て歎くと告よ皆人に
いつをいつとていそかさるらん/n4-60l