[[index.html|醒睡笑]] 巻4 そでない合点
====== 39 人みな連歌をし習ふとて一順の月次のなどとてはやらかす・・・ ======
===== 校訂本文 =====
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人みな連歌をし習ふとて、「一順(いちじゆん)の」、「月次(つきなみ)の」、などとて((「とて」は底本「もて」。諸本により訂正。))はやらかす。
「うらやまし、われもちと稽古せむ」と思ひたち、宗匠(そうしやう)する人に向かひ、「大体(たいてい)一句の仕立て、いかなる心もちにて工夫いたし候はんや」。「さればよ、この道を学ばんとすれば、いと深く藻屑(もくづ)も寄らぬ和歌の浦なれど、言葉短かう、聞き高く、心を深う、ものあはれに、華奢風流(きやしやふうりう)に付くやうに」。
かの人、聞くと同じく、「はや合点(がつてん)参りて候ふ。一句申さん、
首ぎはや二季の彼岸に茶香杵
「心は」と問はれ、「されば、水をわたるに首ぎはに及ぶは深ければなり。もののあはれは二季の彼岸、華奢風流なるは茶と香と、つくやうには餅つく杵」。
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===== 翻刻 =====
一 人皆連歌をしならふとて一順(しゆん)の月次(つきなみ)のなと
もてはやらかすうら山し我もちと稽古(けいこ)せ
むとおもひたち宗匠(そうしやう)する人にむかひ大体(たいてい)/n4-50l
一句のしたて如何なる心もちにて工夫いたし候
はんやされはよ此道をまなばんとすれはいと
ふかくもくづもよらぬ和哥のうらなれど
こと葉みじかうききたかく心をふかふ物あは
れに花奢風流(きやしやふうりう)につくやうに彼人きくと
同はや合点(かつてん)参りて候一句申さん
くびきはや二季の彼岸(ひかん)に茶香杵(ちやかうきね)
心はととはれされは水をわたるにくびきはに
をよぶはふかけれはなり物のあはれは二季(き)/n4-51r
の彼岸(ひかん)花奢風流なるは茶と香とつくやう
には餅(もち)つくきね/n4-51l