[[index.html|醒睡笑]] 巻4 そでない合点
====== 1 何のとりえもなき者あり・・・ ======
===== 校訂本文 =====
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何のとりえもなき者あり。ほど近(ちか)にさすがなる侍の住まれけるへ、明け暮れに出入(しゆつにふ)する。武蔵鐙(むさしあぶみ)の下の句((武蔵鐙さすがにかけて頼むにはとはぬもつらしとふもうるさし(『伊勢物語』)の「とはぬもつらしとふもうるさし」))の心や、問ふもうるさき様なりしかば、小姓に言ひ教へ、「件(くだん)の男来たりたらば、『長数珠(ながじゆず)』と言へ」となり。
案のごとく暮れ方に来たれり。小姓出でて、「殿のいつも噂(うはさ)を仰せある」。「何とや」と尋ねければ、「そなたをば長数珠ぢや」とは、「くる((繰る・来る))にくたびれた」といふことなるを、かの男はさかさまに得心し、「さうであらう。『くるが遅い』といふことの」と。
人の上ゆふつけ鳥のしだり尾の長物語心あるべし
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===== 翻刻 =====
曽而那以合点
一 何のとりえもなき者ありほとちかにさすか
なる侍のすまれけるへ明暮(あけくれ)に出入(しゆつにう)する
武蔵鐙(むさしあぶみ)の下の句の心やとふもうるさき様な
りしかは小性にいひをしへ件の男来りたらは
長数珠(ながじゆず)といへとなり案(あん)のことく暮(くれ)かたに来
れり小性出て殿のいつも噂(うはさ)を仰あるな
にとやと尋けれはそなたをは長数珠しや
とはくるにくたひれたといふ事なるを彼男/n4-35l
はさか様に得心(とくしん)しさうてあらふくるがをそ
いといふ事のと
人の上ゆふつけ鳥のしたり尾の
長物かたりこころあるへし/n4-36r