[[index.html|醒睡笑]] 巻4 いやな批判 ====== 11 人の通ひもまれなる山中にて座頭の琵琶を負ひ・・・ ====== ===== 校訂本文 ===== [[n_sesuisho4-037|<>]] 人の通ひもまれなる山中にて、座頭の琵琶を負ひ、岨(そは)の懸路(かけぢ)をつたふあり。薪を拾ひゐたる賤(しづ)の男(を)、これを見付け、むかうの谷に友達のゐけるを高声(かうしやう)に呼び、「やいやい、あの杖突き虫((シャクトリムシ))の出でたを見よ。あら珍しや。つひに一期に見ぬ虫や」と呼ばはる時、「この十年ばかり先に、何の虫がこの道へ出でてあつたが、その年蕎麦が良かつた。今年もさては蕎麦が良からうず」と。 [[n_sesuisho4-037|<>]] ===== 翻刻 ===== 一 人のかよひもまれなる山中にて座頭(さとう)の琵琶(ひは)   を負岨のかけぢをつたふあり薪をひろひ   ゐたる賤(しづ)の男これを見付むかふの谷に友達   のゐけるを高声(かうしやう)によひやいやいあの杖(つゑ)つき   むしの出たを見よあらめつらしやつゐに一期(こ)   にみぬ虫やとよばはる時此十年はかり先(さき)に   何の虫か此道へ出てあつたがその年そばが   よかつたことしもさてはそはかよかろふずと/n4-32l