[[index.html|醒睡笑]] 巻4 聞こえた批判
====== 19 九重の内油の小路通りに何事やらん雑人集まりかまびすしくものあらがふ体あり・・・ ======
===== 校訂本文 =====
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九重の内、油の小路通りに、何事やらん雑人集まり、かまびすしくものあらがふ体(てい)あり。沼の藤六((沼藤六・野間藤六))行きあはせ、立ち寄り様子を聞きゐたるに、一方は丹波より荏(え)をもちて売りにのぼりたる商人なり。一方は京の油屋にて亭主なり。
亭主は荏を簸(ひ)て買はんと言ふ。丹波の者は、「昔より簸ずに売りつけたり。今さら何事に簸ては売る((「売る」は底本「える」。諸本により訂正。))まい」と言ふ。口論果てず、時に藤六近ごろ((「近ごろ」は底本「〓比」。〓は判読不明。諸本により補う。))さし出でなれども、洛外にてはともあれかくもあれ、京の内ならば、なかなか簸て取ることはなるまい。その子細は、いろはに、『ゑひもせず京((「え簸もせず京」。いろはかるたは最後が京で終わる。))』とさだまれり。簸ずに買へ」と。
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===== 翻刻 =====
一 九重の内油の小路とをりに何事やらん
雑人あつまりかまひすしく物あらがふてい
あり沼の藤六行あはせ立より様子を聞
ゐたるに一方は丹波より荏(ゑこ)をもちて売(うり)に
のほりたる商人也一方は京の油やにて亭主
なり亭主はゑをひてかはんといふ丹波の者は昔
よりひすにうりつけたり今更何事にひては
えるまいといふ口論(こうろん)はてず時に藤六〓此さし
いでなれとも洛(らく)外にてはともあれ角もあれ/n4-20l
京の内ならば中々ひてとる事はなるまい其
子細はいろはにゑひもせす京(きやう)とさだまれり
ひずにかへと/n4-21r