[[index.html|醒睡笑]] 巻3 清僧 ====== 2 禅に一路とて得法の僧ありし・・・ ====== ===== 校訂本文 ===== [[n_sesuisho3-100|<>]] 禅に一路(いちろ)((一路居士))とて、得法(とくほふ)の僧ありし。和泉の国大鳥の辺りに草庵を結び、友もなく星霜を送らるる。財宝とては、手どりとかやいふ、小さき釜に口のあるを所持し、朝夕の煙(けぶり)を立てられき。 ある時たはぶれて、   手どりめよおのが小口(こぐち)のさし出でて雑炊煮たと人に語るな   身を隠す庵(いほり)の軒の朽ちぬれば生きても苔の下にこそあれ   月は見ん月には見えじながらへて憂き世をめぐる影も恥かし [[n_sesuisho3-100|<>]] ===== 翻刻 ===== 一 禅に一路(いちろ)とて得法の僧ありし和泉の国/n3-48r   大鳥の辺に草庵をむすひ友もなく星(せい)   霜(さう)をおくらるる財宝とては手どりとかや   いふちいさき釜に口のあるを所持(しよぢ)し朝   夕の煙(けふり)をたてられきある時たはふれて     手どりめよをのが小口のさし出て     増水(ぞうすい)にたと人にかたるな     身をかくす庵の軒の朽ぬれば     いきても苔の下にこそあれ     月は見ん月には見えしなからへて/n3-48l     うきよをめくる影もはつかし/n3-49r