[[index.html|醒睡笑]] 巻3 自堕落
====== 20 坊主いつも鮎の名を剃刀と付けて箱に入れ求むるを・・・ ======
===== 校訂本文 =====
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坊主、いつも鮎の名を「剃刀(かみそり)」と付けて、箱に入れ求むるを、常のことなれば、小者よく知りたり。
ある時、かの僧、河を渡るに、鮎の多くありくを見て、小者後(あと)より、「御坊様、いつも秘蔵してこなたの入れ物にある剃刀がありくに、足を切り給ふな」と言ひければ、坊主、「今は八月なり。剃刀がいかほどあると、錆(さび)ようほどに((秋の産卵期の鮎をその模様から錆鮎という。))、足は切れまいぞ」と言へり。
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===== 翻刻 =====
一 坊主いつも鮎(あゆ)の名をかみそりとつけて箱に
入もとむるを常の事なれば小者よくしり
たりある時彼僧河をわたるに鮎のおほく
ありくを見て小者後より御坊様いつも/n3-45r
秘蔵してこなたの入物にあるかみそりがあ
りくに足をきり給ふなといひければ坊主
今は八月なりかみそりがいかほどあるとさび
ようほとに足はきれまいそといへり/n3-45l