[[index.html|醒睡笑]] 巻3 不文字 ====== 47 一宇の御堂造立すでに成就し棟札を書かんと・・・ ====== ===== 校訂本文 ===== [[n_sesuisho3-065|<>]] 一宇の御堂(みだう)造立(ざうりふ)すでに成就し、「棟札(むなふだ)を書かん」と法印出でて筆を染め言はれけるは、「この表に、あらゆる仏菩薩(ぶつほさつ)、並びに日本の神々を書き付くるは」とあれば、かの大工、「わたくしをも諸神のうちへ入れてあそばし候へ」と言ふ。法印、大きに笑はせ給ひ、「何とてさやうに道もなきことを言ふぞ」と尋ねられし時、「われも神の内なるまま、苦しからず」。「何として神にはなりたるや」と尋ねらるるに、大工かしこまり、「わたくしこそ若狭の守(かみ)にて候ふほどに」。 [[n_sesuisho3-065|<>]] ===== 翻刻 ===== 一 一宇の御堂造立(ざうりう)すてに成就し棟札(むなふだ)   をかかんと法印出て筆をそめいはれけるは   此おもてにあらゆる仏菩薩(ほさつ)ならひに   日本の神々をかきつくるはとあれはかの   大工わたくしをも諸神のうちへいれてあ   そばし候へといふ法印大きにわらはせ給   ひ何とてさやうにみちもなき事をいふそ/n3-29r   とたつねられし時われも神の内なるまま   くるしからすなにとして神にはなりたる   やとたつねらるるに大工かしこまりわたくし   こそ若狭のかみにて候ほどに/n3-29l