[[index.html|醒睡笑]] 巻3 不文字
====== 3 元日に羹を祝ふところへ数ならぬ者礼に来たる・・・ ======
===== 校訂本文 =====
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元日に羹(かん)を祝ふところへ、数ならぬ者礼に来たる。亭主、「膳を出せ」と言ふに、そのまますゑたり((「すゑたり」は底本「まへたり」。諸本により訂正。))。亭、嬉しげに、「積善(しやくぜん)の余慶(よけい)じや」など感ずるを聞き、「さては、かやうに下には芋・大根を盛り、中に餅、上に豆腐・くくたちを盛るをば、『積善の余慶』といふことよ」と覚えて立ち、件(くだん)の者、またさる方へ行く。
膳出でたり。見れば、今度のは豆腐とくくたちを下に盛り、中に餅、上に芋・大根を盛りたり。箸を持ちてほめけるは、「さても、この余慶の積善は、一段温かにでき参らせたるよ」と申しけり。
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===== 翻刻 =====
一 元日にかんをいはふ処へ数ならぬ者礼に来る
亭主膳を出せといふにそのまままへたり亭
うれしけに積善(しやくせん)の余慶(よけい)しやなどかんずるを/n3-12r
聞さてはかやうに下にはいも大根をもり中に餅
上にたうふくくたちをもるをは積善(しやくせん)のよけいと
いふ事よとおほえてたち件の者又去かたへ
行膳出たり見れは今度のはたうふとくくたち
を下にもり中にもち上にいも大根をもりたり
箸をもちてほめけるは扨も此余慶(よけい)の積善(しやくせん)は
一段あたたかに出来まいらせたるよと申けり/n3-12l