[[index.html|醒睡笑]] 巻3 不文字 ====== 1 朝倉の山椒を一袋持たせ侍のもとへ音信につかはしけり・・・ ====== ===== 校訂本文 ===== [[n_sesuisho3-019|<>]] 朝倉の山椒(さんせう)を一袋持たせ、侍のもとへ音信(いんしん)につかはしけり。折節かの侍、途中にて行き合ひ、文(ふみ)添へて上げければ、「そちの見るごとくなるまま、返事に及ばず。また一袋の御重宝(ごちようほう)悦び入り候ふ」よし、使、聞きとどけ、道の二・三町も行きしが、「よくよく思へば、今の言葉が済まぬ。今一度ことはらん」と、息をつきかね走り戻りぬ。馬をとどめ問はせけるに、「今の一袋は御重宝では御座ない。朝倉と申す山椒にて候ふ」と。 これなん不思議の御重宝((底本、この文小書き。))。 [[n_sesuisho3-019|<>]] ===== 翻刻 =====    不文字 一 朝倉の山椒(さんせう)を一袋もたせ侍のもとへ音信(いんしん)に遣(つかは)   しけり折ふし彼侍途中(とちう)にて行あひ文そ   へて上けれはそちの見ることくなるまま返事   にをよはす又一袋の御重宝(てうほう)悦入候よし使   聞ととけ道の二三町も行しかよくよく   おもへは今のことはがすまぬ今一度ことはらん   と息(いき)をつきかねはしりもとりぬ馬をとどめ   とはせけるに今の一袋は御重宝では御座ない/n3-11l   朝倉と申山椒にて候と これなんふし義の御重宝/n3-12r