[[index.html|醒睡笑]] 巻2 吝太郎(しはたらう) ====== 10 伊勢の桑名に喜蔵庵とていかにもしはい坊主のありし・・・ ====== ===== 校訂本文 ===== [[n_sesuisho2-079|<>]] 伊勢の桑名に、喜蔵庵(きざうあん)とて、いかにもしはい坊主のありし。たまさかに賓客の来たれり。対面の後、眠蔵(めんざう)に入りて、再び出でず。客、不思議に思ひ、そこあたり尋ぬるついでに、眠蔵を見られたれば、脇差を抜き、百繋ぎたる銭縄の口にあててゐけり。「こは何事ぞ」と問はれしかば、「されば候ふよ。この百銭の口を切らうか、さらずは腹を切らうか、その思案をつかまつる」と申しあへり。 [[n_sesuisho2-079|<>]] ===== 翻刻 ===== 一 伊勢の桑名に喜蔵庵とていかにもしはい坊主   のありしたまさかに賓客の来たれり対面   の後眠蔵に入てふたたひいてず客不思議   におもひそこあたりたつぬるつゐてにめんさう   を見られたれは脇指をぬき百つなきたる   銭縄の口にあててゐけりこは何事ぞととは   れしかはされは候よ此百銭の口をきらふか   さらすは腹をきらふか其しあんを仕ると申   あへり/n2-43r