[[index.html|醒睡笑]] 巻2 吝太郎(しはたらう) ====== 7 わが門に立ち出でて遊びゐければふと知音の者の通るに見参したり・・・ ====== ===== 校訂本文 ===== [[n_sesuisho2-076|<>]] わが門(かど)に立ち出でて遊びゐければ、ふと知音(ちいん)の者の通るに見参したり。「やれ、めづらしや。立ち寄り給へ」ととむる。「嬉しくも会ひたり。ちと急ぐ用のありて行く。このたびは許し給へ」と言へども、「さりとはたまのことなり。振舞ははずに寄られよや」と、しきりにとどめしかば、さりがたくて立ち寄りし。 かくて、待てども待てども茶をも出ださず。日も暮れかかり、目も暗うなるほどなれば、客腹立(ふくりう)し、「人をうつけ者にしなしたるは」と言ふに、「さればこそ、われは始めより『ふるまはず((「ず」は打ち消しの助動詞。客は意思の助動詞「ず」(「むず」が転じたもの。)と解釈した。))に寄れ』と言うたは」とて、「まは」と「ず」との間に句を切りたるぞをかしき。 [[n_sesuisho2-076|<>]] ===== 翻刻 ===== 一 我が門に立出てあそひゐけれはふと知音の者/n2-41r   のとをるに見参したりやれめつらしや立   よりたまへととむる嬉しくもあひたりちと   いそく用のありて行此度はゆるしたまへ   といへともさりとはたまの事也ふるまはずに   よられよやとしきりにととめしかはさりかたく   て立よりしかくてまてまてともともちやをも出   さず日もくれかかり目もくらふなる程なれは   客腹立し人をうつけ者に仕なしたるは   といふにされはこそわれは始よりふるまはず/n2-41l   によれといふたはとてまはとすとのあひだに   句を切たるぞおかしき/n2-42r